本を読んでると別のことを考えてしまう「リーキーアテンション」は才能かもしれない
「本を読んでいるはずなのに、気づいたら全然関係ないことを考えている——」
これ、私にとっては日常だ。
ページをめくって文字を追っているはずなのに、頭の中では「明日仕事であれやらなきゃ」「そういえば見たい映画があったな」「今日やり残していることがあった気がする」——と、まったく関係ないことがぐるぐる回っている。
しかも何が気になるかは、その時々でバラバラ。仕事のこともあれば、やらなきゃいけないことのときもあるし、なんなら見たい映画のことだったりする。
「これって自分だけ? ADHDなのかも?」と検索している人も多いかもしれない。でも結論から言うと、別のことを考えてしまうのは、脳の異常でも病気でもない。
【結論】別のことを考えてしまうのは脳の正常な反応
まず最初にはっきりさせておきたいのは、読書中に雑念が浮かぶのは人間として極めて普通のことだ、ということ。
私自身、読書中に別のことを考えてしまうことについて「自分がダメだ」と思ったことはまったくない。「まあ、そういうもんか」くらいの感覚だ。
そもそも人間の脳は1日に約6万回も思考していると言われている。起きている時間を16時間とすると、1分間に60回以上、ほぼ1秒に1回何かを考えている計算だ。そのほとんどは自分の意志とは無関係に勝手に浮かんでくる雑念。
「読書中に別のことを考えてしまう」のは、脳がちゃんと動いている証拠でもある。6万回も思考している脳を完璧にコントロールして「読書のことだけ考える」なんて、冷静に考えたら無理がある。
「リーキーアテンション」とは何か?
注意が「漏れる」現象。集中しているはずの意識が別のところへ流れてしまう
リーキーアテンション(Leaky Attention)とは、日本語にすると「注意の漏れ」だ。
目の前の作業に集中しているはずなのに、注意が「漏れる」ように別の方向へ流れていく。水道管にひびが入って水が漏れるように、集中しているはずの意識がポタポタとどこかに漏れ出てしまう——そんなイメージ。
読書中で言うと、こんなパターンだ。
- 本を読んでいるのに、いつの間にか仕事のことを考えている
- やらなきゃいけないことが急に頭に浮かんで気になり出す
- ある一文を読んだ瞬間、全然関係ないことを思い出す
私の場合、考えごとがすぐ終われば読書に戻れる。「あ、そういえば……まあいいか」と流せればすぐ本に戻れるんだ。でも考えごとがだらだら続くときは、もう読書に戻れない。そういうときは一旦本を閉じてしまう。
戻れるときと戻れないときの差は正直よく分からないが、疲れているときや気がかりなことがある日は、まず戻れない気がする。
ADHDとの違い。日常生活全般に困難があるかどうかがポイント
「読書中に集中できない」と検索すると、ADHD(注意欠如・多動症)というキーワードが必ず出てくる。
結論から言うと、読書中に意識が飛ぶだけでADHDと判断することはできない。
ADHDは、注意力の問題が読書だけでなく、日常生活のあらゆる場面で支障をきたしている状態を指す。仕事で重要な約束を頻繁に忘れる、財布や鍵をしょっちゅうなくす、人の話を最後まで聞けない——こういった困難が子どもの頃から継続的にある場合に、医師が総合的に判断して診断するもの。
映画やゲームには何時間も集中できるのに読書だけ集中できない——こういう場合は、ADHDというより脳が「読書」という作業に慣れていないだけの可能性が高い。
私自身、ADHDを疑ったことは一度もない。ゲームなら1〜2時間集中できるし、仕事もちゃんとできている。読書のときだけ雑念が浮かびやすいだけだ。
もちろん、日常生活全般に困難を感じている場合は、専門の医師に相談した方がいい。ただ、「読書中に別のことを考えてしまう」だけなら、それはリーキーアテンションという人間なら誰にでもある現象の可能性が高い。
リーキーアテンションが「才能」と言える科学的根拠
ここからがちょっと面白い話だ。
注意が散漫な人ほどクリエイティブという研究結果
リーキーアテンションの傾向が強い人は、クリエイティブな能力が高いという研究結果がいくつも報告されている。
ハーバード大学の研究では、注意のフィルタリングが弱い人(関係のない情報まで脳に入ってきてしまう人)ほど、創造性テストで高い得点を出す傾向があることが分かった。
通常、脳は「今必要な情報だけを取り入れ、不要な情報は遮断する」というフィルタリングを行っている。でもリーキーアテンションの人はこのフィルターが緩い。だから「不要な情報」まで入ってきてしまう。
読書中に「今日やること」が浮かんでくるのは、まさにこのフィルターの緩さが原因だ。でもこのフィルターの緩さは裏を返せば「一つの枠にとらわれず、幅広い情報を同時に処理できる脳」だということでもある。
一つの枠にとらわれない発想力は現代社会で武器になる
普通の人が「これは今関係ない」と遮断してしまう情報が、リーキーアテンションの人の脳には入ってくる。
その結果、一見まったく関係ないものの間に、意外なつながりを見つけることができる。「AとBは別の話だけど、こういう共通点がある」「この問題、全然関係ない分野のあの方法で解決できるんじゃないか」——こういう「飛躍したアイデア」が生まれやすいのは、注意のフィルターが緩い人ならではの強みだ。
歴史上の偉人にもリーキーアテンション傾向の人は多い
レオナルド・ダ・ヴィンチは絵画、科学、建築、解剖学、音楽など驚くほど多くの分野に興味を持ち、次々と異なるテーマに取り組んだ。一つのことに集中し続けるのが苦手で、未完成の作品も多かったと言われている。でもその「あちこちに飛ぶ関心」こそが、天才的な発想力の源だったのかもしれない。
アインシュタインも学校の授業中に別のことを考えていたエピソードが有名だ。
正直に言うと、私自身に「注意散漫=クリエイティブ」の実感はない。ダ・ヴィンチやアインシュタインと同じだなんて思えない。ただ、「集中できない=ダメ」ではないということを知っておくだけで、読書に対する気の持ちようはだいぶ変わると思う。
リーキーアテンションでも読書を楽しむ方法
「才能かもしれないと言われても、読みたい本が読めないのは困る」——そう思うのは当然だ。ここからは実践的な話。
浮かんだことは「一旦流す」か「一旦やめる」の二択でいい
私がやっている対処法はかなりシンプルだ。
読書中に別のことが浮かんだとき、考えごとがすぐ終わりそうなら「まあいいか」と流して読書に戻る。「あ、今日あれやってないな……まあ後でやればいいか」——これで戻れるならそれでいい。
逆に、考えごとがだらだら続いて全然読書に戻れそうにないなら、一旦読書を止める。無理して読み続けても字を追っているだけで頭に入らない。それなら潔くやめて、別のタイミングで再開した方がずっといい。
「集中できないのに無理して読み続ける」のが一番もったいない時間の使い方だと思っている。
調べたいこと・気になったことはメモだけして後回し
記事06(スマホとの距離感)でも書いたが、読書中に「あれ気になるな」と浮かんだことは、メモ帳にサッと書いて後で調べるようにしている。
紙に一言書くだけで、脳から「忘れたらどうしよう」というプレッシャーが消える。頭の中から外に出すと、意外とスッと読書に戻れることが多い。
聴く読書なら意識が飛んでも巻き戻しが簡単
紙の本を読んでいて意識が飛ぶと、「どこまで読んだっけ?」と戻る場所を探すのが地味にストレスだ。
Audible(オーディオブック)なら、巻き戻しボタンを一回押すだけで戻れる。紙の本のように「どこまで読んだか探す」手間がない。
私は電車やバスの中でAudibleをよく使うが、意識が飛んだときの復帰が楽なのは助かっている。
【まとめ】「集中できない自分」を責める必要はない
読書中に別のことを考えてしまうのは、脳の正常な反応だ。人間の脳は1日6万回も思考していて、雑念が浮かぶのは当たり前のこと。それだけでADHDや病気を心配する必要はない。
科学的には、注意のフィルターが緩い人ほどクリエイティブという研究結果も出ている。「集中できない」は「ダメ」ではなく、脳の「特性」だ。
私は「そういうもんか」くらいの感覚で付き合っている。考えごとが終われば読書に戻るし、戻れないなら一旦やめる。それだけだ。
読書に集中できないことで自分を責めている人がいるなら、ちょっと肩の力を抜いてみてほしい。あなたの脳は壊れていない。人と少し違うだけだ。


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